おい....
おい....!
起きろよ....!
起きろって言ってんだろう!このドアホが!
痛っ!
な、なんなんだ、一体?
「こんな状況で呑気で寝ているお前が悪いんだよ!」
え?誰??
強烈な激痛で目が覚めたら、そこには今までの見たこともない女の子が、僕の胸ぐらを掴んだまま僕をにらんでいた。
お前…やっと目が覚めたな!どうするんだよ!お前が始めたことだから、なんとかしろっと言ってるの!
彼女の顔があまりにも近すぎて、彼女が口を開くたびに彼女からの甘い吐息を感じた。何となく胸がときめく。
しかし、こんなにテンパっている状況からみると、何らかの問題が起こったことに違いないと思い、僕は周りに目を配った。
そこには、誰でもが「あ、山賊だ」と一目でわかりそうな格好の男達が十数人ほど、それぞれ武器を持って僕たちを囲んでいた。
女の子はちょっと涙目で僕のことを直視している。怖いのか、いやなのか、わざと山賊の方から視線をそらしている感じだ。
僕が目を覚めたことに向こうも気づいたようで、その中の一人が怒った声でこう喋り始めた。
「この野郎....先ほどはよくも俺様のことを舐めてくれたな!お前ら二人はまず手足を切り落としてから、「殺してください」と泣き叫ぶまでいたぶってやる!」
なにその物騒な言い方は。僕、あんたらに何も悪いことしてないけど?
っていうか、そもそもなんでこんな状況になったか全くわからないけど?
と思った瞬間、その男が「やれ!」と合図をしたら、一人の男が、いや二人の男が別々の方向から僕らに迫って来た!
危ない....!
声を上げる余裕もなく、僕は彼女が刃物に切りつけられないよう、咄嗟に自分の体で彼女をかばう。
キーン!カーン!
僕の背中に刃物が当たったと思ったその時、鉄と鉄がぶつかり合う金属声が響く。
あ....れ....?
良かった!守りの魔法の効果がまだ残っていたわ!さあ、早く奴らを倒してよ!何をぼーっとしてるの?
守りの魔法…?あいつらを倒せ…と?
一体なにがなんだかわからないけど、ここで大人しく悪い人におめおめと殺されることは自分だってごめんだ。
しかも、不思議なことに、彼らの姿や刃物を見ていても、恐怖心で体が動かないとか、そんなことは全くなかった。
まるで演劇の芝居をしているような感覚で、太陽の光で瞬く刃物を見てても、あれで自分が死ぬことなんてありえないとそう思う自分がいた。
いつの間に、僕の右手には1本のショットソードが握られている。いや、今まで手に持っていたことを意識してなかっただけだ。彼女の声で目が覚めた瞬間から、僕はそれを手に持っていたのだ。
最初の攻撃が通じなかったことで一瞬戸惑った山賊たちは、今回は4人がかりで僕の方へ攻撃を仕掛ける。
しかしー
「ーーーーーーーーーーーーーー!!」
僕は相手の攻撃に合わせて、剣を横に思いっきり振っただけだった。
だったそれだけなのにー
「うあああああああああああっ!!!!!」
一番手前にいた山賊の腕がなくなり、その後ろの山賊は衝撃に転んで地面に倒れていた。残った二人は武器を持ったまま、その場で立ち尽くし、信じられないと言わんばかりの表情でこちらを見ている。
僕だって今すごく驚いてるよ。人を怪物でも見るようなそんな目で見ないでほしい。
後ろの女の子に目を向くと、案外彼女は当然という顔で僕と山賊を見ている。
自分はこいつらよりずっと強いのか?じゃ、もしかすると僕が彼女の用心棒か何かだったかもしれない。
このような状況になる前の記憶が全くないけれど、山賊に襲われていた彼女と偶然出逢えて、彼女を助けようとしたかもしれない。
けれど、記憶もないのに見知らぬ連中と戦い、彼らの命を奪いたくはない。僕はできるだけ穏便にこの場をしのぎたい。
「あまり殺生はしたくありません。この辺で引き返してくれませんか?お互いの被害が少ないうちに」
「なー!?」
「何言ってるのよ、このドアホ!山賊退治でお金を稼ごうと言ったのはあんたじゃない!山賊の巣までのこのこやってきて挑発してから、殺生はしたくないから帰れ、と?!あんた、本っ当ーにバカじゃない?」
彼女の怒鳴り声で耳がいたい。勘弁してほしい。そうか。僕は冒険者か傭兵かバウンティーハンターかそんな類の人間だったのか。しかし、僕が山賊を挑発してたのか。これはもはや戦うしかないな....
僕は心を決めて、山賊の方に一歩踏み出す。
これが、僕の物語の始まり、である。
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